単なるコレクションとなるのを快く思われない方もいると思いつつもミズホ通信のピコトランシーバーが好きで集めていた。
しかし、青臭い中学生の私が無線機に対して持っていた憧れは「大きなチューニングダイヤル」に「周波数直読のデジタル表示」などの機能を持ったバンド内をフルカバー可能なPLL式トランシーバーだったことから、アナログ的で小さなチューニングダイヤルに加え「Sメーターも無く、周波数も僅かしか変化できない無線機の何処が良いのだろう?」と理解できなかった。 社会人になり、ようやく従事者免許を得て7K1コールサインでの開局となったが、この頃になってミズホ製品に魅力を感じ始めた。シンプルだが必要にして十分なバンドカバー範囲、QRPながらもロケーション次第でDXも可能、そして何よりも手作りキットの雰囲気を持っていることが最大の理由だった。中学生時代と違い多少の財力はあったのでピコシリーズも7S/21S/6Sと揃え、全てにリニアアンプ・ホイップアンテナ・ラックを揃えた。 それからアマチュア無線を再開するには2002年のピコ6Sとの再会(と衝動買い)まで10年以上の時間を必要とした。2005年には店頭からピコシリーズの新品は消え、生産中止などで入手不可能な部品も出ていることからミズホ通信でも修理を全て行える状態とはなっておらず、2002年2月は偶然にしろ新品のピコトラを購入できた貴重なタイミングだったと思う。しかし、今だからこそピコトラがデビューした当時のOM達の気持ちが少しだけ理解できたような気がする。むしろ、このシンプルで可愛らしいトランシーバーをどこまで使いこなせるかと考えると、あまりに奥深い世界があるようで気が遠くなる。 ■ピコシリーズの歴史について 雑誌などから知り得たピコラインの歴史を簡単に。
1983年5月には決定的なモデルでもあるMX-6Sが発売され、MX-6Zで250mWだった出力は1Wとなり、電源が単四電池から単三電池になったことで運用時間にも余裕が生まれ、充電回路の搭載により二次電池の使用が可能となった。操作面でも変化があり、ボリュームがボディサイドからトップパネル面になりPTTスイッチもロック式から普通のスイッチになったが、特に目立つのはSメーターの搭載で耳Sのみとなっていたピコの運用に大きな影響を与えた。MX-6Sから始まったピコトラスーパーシリーズで技術的に一番大きな特徴はMX-3.5SからMX-6Sまで基板が共通ということだろう。周波数によってトランジスタやダイオードの数、コイルの数や定数などはちがうものの、3.5MHzと50MHzという全くちがう周波数でも同じ基板というのは正直なところ驚き以外に言葉がない。この共通基板には前期と後期があり、MK-1153Aが前期、MK-1170が後期となる。このピコトラスーパーシリーズは完成度が高く、今でも現役としてMX-xSシリーズを活用している人が多いと思われる。(それ以上に私のようなコレクターがいるのではないかと推測される)
MX-6Sが発売された1983年はMX-7SとMX-21Sも発売され、MX-10Zも発売される。MX-7Sはピコトラスーパーシリーズでは初のHF帯となるが、出力は2WとなりVHFとHFの差かピコ6Sとは部品構成が若干違った。翌年の1984年にはAM-6X、翌1985年からは毎年新しい製品が発売され、MX-3.5S、MX-28S、MX-14SとHF帯CW/SSBハンディの一大帝国を築き、1994年には1982年以来の2m製品となるMX-2Fが発売されているが、「ピコ」の名を冠する無線機はこのMX-2Fが最後となってしまった。 いつからかは調べていないが、オリジナルのミズホブランドからJim扱いになると同時にピコトラの製造はサンテックとなる。性能的には全て同じものだったがJimブランドのピコシリーズはコストダウンのためかリニアアンプの型番が印刷された機種固有のパネルではなく、型番の箇所がシールとなっていたり、配線まで詳しく載っていた取扱説明書もJimシリーズになってからは簡略化され、その取説もMX-7SからMX-6Sまで共通のものだったせいかMX-6Sでは出力が「2W」と誤植されているなど間違いも目立つ。やはり皆「MIZUHO」というブランドも魅力の一つとしていたのかJim扱いのピコに関してはイマイチという評価を聞くことが多く、また、噂の範囲だが部品に関しても幾つかがコストダウンされたとも言われている。何がどれだけ変わったかの詳細は不明だが、個人的にはポリバリコンの感触が9R-59カラーではしっとりと粘るのにJimカラー/シルバーメタリックカラーではスカスカというケースが多いように感じる。これはポリバリコンをはじめとした細かいパーツの製造が日本国内から海外に移ってしまったことも原因と言われているので、Jimブランド時代のコストダウンだけが理由ではなさそうだ。 完全に無線から離れていた1985年〜1989年と1991年以降は詳しく知らないが、長期間の販売期間を誇ったピコトランシーバーもJim扱いがしばらく続いた後の1991年頃にミズホ通信からピコシリーズの終了宣言が出ているが結果的には再生産が決定され、ブランド名を再び「MIZUHO」に戻しボディカラーをシルバーメタリックにして再登場した。色こそ微妙に違うものの、フロントパネルの文字も橙色に戻り初期のピコトラのような感じに戻った。その後はMX-2Fを新製品として発売するが生産ラインの関係で常に安定して供給された訳ではなく、2002年頃までは他のMX-6S/7S/21Sに関しても少数だが入手できただけの部品による少量の再生産が行われていたらしい。しかし2003年後半には市場への流通がほとんど無い状態に近かったらしく、理由はミキサICのSN16913Pが製造終了となり入手困難になったからと聞いている。 2004年11月、ミズホ通信は工場移転と共に規模の縮小を発表し、ピコシリーズに関しては簡単なサポートのみとなった。初代ピコ6から数えて23年と1ヶ月、ピコ6Sからは21年と1ヶ月、一度は終了宣言が出たものの、無線機としては異例の長期にわたる生産・販売期間を誇ったピコトランシーバーは惜しまれつつも静かに舞台から去った。 2006年9月まではピコトラのオプションであるVXO用クリスタルなどがアマチュア無線応援団「キャリブレーション」などを通すなどして対応していたが、9月13日の更新を以てVXO水晶および補修パーツの取り扱いが終了し、事実上の供給終了となった。 ミズホ通信のほとんどの製品は業務終了に伴い生産を終えたが、CW送信基板キットQP-7/QP-21に関してはアマチュア無線応援団「キャリブレーション」に引き継がれ、キャリブレーションオリジナル CalKitの[508]QP-7/[509]QP-21として引き続き販売されている。(2013年1月現在) ピコシリーズを世に送り出してくれたミズホ通信の高田OMと支えて頂いたご家族・社員の方々に感謝しつつ、次代の製作者(技術者)が育ってくれることを願う。 ■ピコシリーズの年表 ピコシリーズの始まりからミズホ通信の工場移転および規模縮小までを簡単な年表にしてみた。 |
||||||||||||||||||||
参考文献: | HAM Journal 1991年5・6月号「去りゆく"ピコ" ピコ・シリーズの歩み」 |
みずほつうしん | |
CQ HamRadio/HAM Journal/Let's HAMing等の雑誌掲載広告 | |
■ピコシリーズのカラーについて ピコトランシーバーの色はボディカラーが5種類、トップパネルについては4種類に分類される。
□オプション品のカラーバリエーションについて ピコトラ本体以外にもオプションパーツであるリニアアンプ PLシリーズ、および、セミブレークイン/サイドトーンユニット CW-2Sに関しても本体と同じカラーバリエーションが存在する。 ■ピコトラ専用クリスタルフィルターについて ピコトラスーパーシリーズでは専用のクリスタルフィルタを採用しているが、長い販売期間の間でフィルターケース上部のシール・印刷が幾つかの種類に分かれる。
フィルター底部がモールドされているのはType1のみ、Type2とType3は密閉されておらず基板パターンが丸見えの状態だが、どちらも基板パターンは異なる。 Type2/3の基板パターンを元に回路図を起こすと以下のような構成だった。 4素子のラダー型フィルターと思われるが、Type1フィルターも恐らく同じ構成だと思われる。 仮にType1のみが違う構成だとしてもケースの大きさから考えて最大で5素子が限界だろう。 また、初期タイプのピコトラスーパーとJim以降のピコトラで実際に使用されていた人の声に同じ型番にもかかわらず性能が著しく違うといった意見は無いと聞いている。 ミズホ通信の高田OMも性能が著しく落ちるような状況を理解しながらピコトラのライセンス生産を継続したとは思えないはずなので(個人的主観が大きく入った考えです)、底部モールドに関係する経年変化はともかくも大きな差は無いと見受けられる。
このフィルターの種類と採用時期については手持ちのピコトラから判断しているが、掲示板へ書き込んで頂けた方の情報もあわせると、Type3に関しては2000年以降の少量生産機種で採用されているようだ。 余談だが、フィルターに関する情報を探していたところ、TRIO(現ケンウッド)のSSBフィルターをAM用に改造している方のページに辿り着いたが、TRIO YK-88Sフィルターもピコ専用フィルターと同じ4素子ラダー型フィルターだった。 ■ピコトラの修理や調整などについて 中古のピコトラを集めていると幾つか不調を持ったものと出会う。
□MX-3.5S/7Sのアッテネータ増設について 後期製造のピコトラでは標準装備になっているボトムパネルのアッテネータスイッチだが、初期のピコトラではアッテネータは存在せず、スイッチの場所はユーザー側で組み込んだ回路の為のスイッチとして「OPTION」としか表記されていない。
■ピコ・トランシーバーに関する情報が掲載された書籍 ミズホ通信自身が発行していた「みずほつうしん」以外に、月刊誌やムックなどでピコ・トランシーバーが幾度か取り上げられている。
□ピコトラの上位機種? 古いCQ ham radio誌に「オメガ技術研究所」という会社の広告があり、そこには「ピコベース」という名の製品が掲載されていた。その広告には「[ピコベース]はミズホ通信(株)の承認により、ピコ・シリーズの親機として開発されたもの。」とある。
■ミズホ製品詳細 ■取り扱い説明書 検索サイトなどでピコシリーズの情報が意外とヒットしないのに驚いた。(探し方が悪い?) 利用に関して当方では責任を負いませんし、また、ミズホ通信に迷惑のかからないようお願いします。 ・PDFファイルの閲覧にはアドビ社のAcrobat Reader(R) Ver.5.0以降のソフトウェアなどが別途必要です。
For public presentation, consent has been obtained from Takada OM of MIZUHO communication incorporated company. (This text was translated by the machine. Sorry,may be difficult to read.) (↑一度だけ、英語の問い合わせが来たので注意文だけ英語化してみました、機械翻訳ですが…) |