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ミズホ通信 ピコトランシーバーのポリバリコン交換

MIZUHO PicoTransceiver : Exchange of a variable condenser

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入手したピコ14S(MX-14S)だが、バリコンの動きがどうも堅い。
容量が抜けているなどの深刻な状態ではないが、微妙な調整を行えるとは言い難く、ピコ14Sのバリコンを交換することにした。

ピコトラのバリコン関係の情報を探すと過去の雑誌に掲載された高田OMの記事に「FM用ポリバリコン20pF×2を繋いで40pFで使っている」とある。
秋葉原などで探すと2連のポリバリコンは300円程度で入手可能だ。
今回、交換に使用したのは秋葉原で入手したFMラジオ用2連ポリバリコン(20pF×2)だ。

mx-14s_varicon02.jpg 秋葉原で入手したFMラジオ用2連ポリバリコン(20pFx2)
AM用は340pFなどの容量となり、一見使えるようで実用に耐えない。
(一定の容量で十分な設計となり、妙な二次曲線カーブの可変となる)

ピコトラSシリーズは初代ピコシリーズのピコ6やピコ2と基板の取り付け方などが大きく違う。
ポリバリコンを外すにしても手順が増えるので厄介だ。
ダイジェスト的な流れとしては以下のようになるが、毎度の事ながら自分へのメモということで作業手順を簡単に記録した。

1)ケース・外装取り外し
2)ノイズブランカ基板取り外し
3)電池ケース取り外し
4)基板とケースのハンダ除去
5)バリコン交換
6)L1およびTC1調整


1)ケース・外装取り外し

まずは電池カバーを外す、これは普段の電池交換でも行う作業だろうから説明は省く。
スピーカーとマイクの配線は取り外さなくても作業を行うことは出来るが、外した方が飛躍的に作業が楽になる。
そんな面倒な作業でもないので私は行っておくことにしている。

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フロントパネルに装着されたMIC/PHONE端子の配線を外す スピーカー/マイクが装着されたまま切り離されたフロントケース

次にボリューム等のツマミやパネルを取り外すが、トップパネルは以下の部品をまず外す。
1)周波数調整ツマミ
2)ボリュームツマミ
3)RIT調整ツマミ
4)内蔵CWキー
5)MIC端子ジャックの固定リング
6)PHONE端子ジャックの固定リング
これらを取り外すとトップパネルが自由になり、バリコンが固定された金属フレームが見えてくる。

次にボトムパネルの取り外しだが、こちらは以下の部品を外す。
1)外部電源ジャックの固定ネジ
2)充電切り替えスライドスイッチの固定ネジ
3)CW/SSBモード切替スライドスイッチの固定ネジ
4)オプションスライドスイッチ(完成品ではアッテネータスイッチ)の固定ネジ
以上でボトムパネルは取り外すことが出来る。

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取り外されたフロントパネル周り

取り外されたボトムパネル周り

ボトム部分はパネルを外した後に外部キージャックの固定リングを外す作業が追加される。
パネルを装着したままでも取り外すことは可能だが、パネル面を傷つける可能性があるので、後から作業したほうが良い。

mx-14s_varicon07.jpg 外部CWキージャックの固定リングを取り外す

完成品のピコトラではボトムパネルのスイッチにアッテネータがあるが、スイッチ部分から基板のコイルへ抵抗がハンダで取り付けられているので外す必要がある。
アッテネータの配線を外したらスイッチ類は全てシャーシ穴から外してフリーにしておく。

mx-14s_varicon08.jpg アッテネータスイッチ部分の拡大画像

次にバリコンのシャフト部分は延長シャフトとなっているので今の内に外しておく。
取り外しはシャフト中心の+ネジを外すだけだ。
延長シャフトを外したらバリコン自体の固定ネジも外しておくが、シャフトの両脇にある皿ネジが2本を外すだけだ。

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シャフト中央の皿ネジを回して延長シャフトを取り外す

バリコン固定のネジはシャフト両脇の皿ネジ2本

これで外装パーツの取り外しは完了だが、バリコンを取り出すには物理的なスペースが無いので、そのスペースを作るための作業へと続く。

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金属フレーム状態のピコ14S(1) 金属フレーム状態のピコ14S(2)


2)ノイズブランカ基板取り外し

※ノイズブランカは完成品の場合は標準装備だが、キットで購入したピコトラの場合はオプションであった為に装備されていない事がある。

まずは電池ケースのトメネジで使用されている六角タップを取り外す、これは単純に回すだけだ。

mx-14s_varicon13.jpg 取り外されたタップボルト

ノイズブランカ基板は両端のネジ2本で固定されて、基板の下にはケースで短絡しないように3mm程度のスペーサーがある。
2本のネジを外し、スペーサーを基板下から取り出す。

mx-14s_varicon14.jpg ノイズブランカを固定している2本のネジとスペーサー

この基板はネジを外しただけでは自由にならず、電池ボックス下から伸びている緑の線が邪魔をして電池ボックスの穴を通ってしまっている。
電池ボックスを外さないとバリコンが取り出せないので、基板を固定している2本のネジを外した後、緑の線をノイズブランカの基板側で外しておく。

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ノイズブランカ側の緑コードを取り外す 緑コードの先は電池ボックス下の○から見える
[参考]
 
電池ボックスを外した時の緑コード接続ポイント


3)電池ケース取り外し

次は電池ボックスを外すが、まずフレームサイドにある皿ネジを4本外して電池ボックスの固定を解く。
ネジロックなどが使用されていることもあるのでネジ山をなめないように注意すること。

フレームの左右にある皿ネジ4本を外す

電池ボックスがフリーになったら配線を外すが、+端子はトップパネル側に赤のコードが伸びているので、それを外す。
−端子は電池ボックスを少しだけ浮かすと取り外しやすい。
配線を外した後、電池ボックスをボトム側へ引くと取り出すことができる。

+端子の配線 −端子の配線
電池ボックスを取り出した画像


4)基板とケースのハンダ除去

バリコンの背中がかなり見えてきたが、取り出すには僅かだがスペース不足だ。
あとバリコンへの配線も接続されたままとなっており、まずは配線から解除する。
バリコンと基板は2本の配線で接続されており、チューブで保護されたワイヤー配線を外す。

まずはコンデンサ左側の黄チューブのワイヤーを外す 次にGNDパターンへ接続された透明チューブのワイヤーを外す


器用な人であればこの段階でポリバリコンを取り出すことが出来るが、それには他の配線が邪魔なので基板の反対側へ無理矢理押し込むなど、断線の可能性が高くなる。
ここではシャーシに固定されている基板を移動し、余裕を持ってポリバリコンを外すところまで踏み込んでいるが、逆に手順が多くなるので自分の力量に応じて判断する必要がある。

さて、確実にバリコンを取り出すにはスペースが足りないので基板を移動するしかない。
基板はネジ止めではなく、6カ所のGNDパターンがフレームとハンダで固定され、ハンダ止めを外してやらないと基板は動かない。
ハンダ吸い取り機などで綺麗に除去できればいいのだが、結構大変だ。
私の場合は30Wのハンダコテとハンダ吸い取りワイヤーの2つのみで少々乱暴だが作業した。

まずボトム側2カ所のハンダを出来る限り吸い取り、シャーシと基板の接点にあるハンダを完全に溶かした状態で軽く押してシャーシと基板を離し、ハンダコテも離す。
基板が若干歪むのと部品自体を押すことにもなり慎重に作業を行うが、ハンダコテの熱がシャーシにも伝わっているので火傷にも注意が必要だ。
基板とシャーシが離れ、ハンダが冷えて固まるのを待ってから手を離す、これで1カ所の基板固定ポイントが外れたことになる。

基板とシャーシが離れた状態

次に反対側の固定ポイントも離し、次に真ん中の固定ポイントを処理する。
トップパネル側はバリコン側のみ固定ポイントを離せば大丈夫だが、念のためにアンテナ側(RIT側)の固定ポイントも離しておいた方がいい。
(アンテナ側の固定ポイントは配線が3本接続されているので戻すときに忘れないこと。)
基板には他の配線が接続されたままだが、バリコン側の基板をわずかに沈ませると取り出しのためのスペースが出来る。


5)バリコン交換

最後にバリコンの上に両面テープで貼り付けられている金属板とラジケータを外す作業となる。
経年変化もありカチカチになった粘着面はドライヤーなどで暖めてゆっくりと剥がす方法もあるが、乱暴な方法として金属板をハンダコテで熱すると両面テープが溶けてくるので小型マイナスドライバ等で軽く押せば取れる。
ラジケータは金属板よりも粘着性の低い両面テープで固定されているだけなので手で剥がせば大丈夫だ。
ここまで作業してようやくバリコンを取り出すことが出来る。
スイッチ等の配線に注意してポリバリコンをゆっくりと取り出す。

バリコンから剥がした金属板 バリコンから外されたラジケータ
バリコンを取り出した状態

取り出したバリコンには基板へ接続する為の配線が残っており、新しく装着するバリコンへ配線を移す。
2連ポリバリコンには3本の足が出ており、真ん中がGND、端の2本が1連づつの端子となるがピコトラは2連バリコンを連結して使用する。
元の配線をそのまま移すだけで作業は完了する。
昔のバリコンでは3本の足に加えて端子が2箇所多い場合もあるが、それはGNDとなるので気にしなくてもいい場合がほとんどだ。
配線を移したら交換用のバリコンは組み込む前に微調整用のトリマ2つとも全開にしておく。

交換するバリコンと取り出したバリコン 微調整用のトリマはどちらも全開にしておく

ここでちょっとした金属加工が必要となった。
元のバリコンに付いていた延長シャフトを交換しようとするバリコンへ取り付けたところ固定ネジの溝がバリコン側へ届いていない。
これを解決するには現状より長い皿ネジを用意するかシャフトを削るかのどちらかだ。
ネジを買いに行くのも面倒なので延長シャフトの内側を削り、皿ネジが沈むようにした。
※秋葉原ガード下2Fにてもっとマシな延長シャフトが入手可能だったが、売り切れなのか姿を見ない。
 また、サトー電気で若干サイズに違いはあるが、流用できそうな延長シャフトを扱っているらしい。(2005年12月)

延長シャフトは問題なく使えそう 加工された延長シャフト
ネジを置いた加工前のシャフト ネジを置いた加工後のシャフト

後はバリコンをピコトラに装着し、今までの作業を逆に辿るだけだ。
ラジケータとバリコンに貼り付けられていた金属板は新しく用意した両面テープで貼り付ける。
尚、金属板の銅リードをハンダコテで外してしまっている場合、両面テープを貼る前にハンダ付けする必要がある。

取り付けられた交換用バリコン 外したバリコンと並んで


6)調整

組み付けを終えたら必要に応じて最後に調整を行う。
容量が全く同じポリバリコンなら大きな差にならないと思うが、秋葉原で入手したポリバリコンは容量が誤差の程度で若干違うのか周波数が少しだけズレてしまっていた。
回路図を見てポリバリコンと並列に配置されているTC1と近くのL1で同調周波数と同調幅の調整が行えると判断し作業を行った。
但し、微調整するならTC1だけにして、大きくズレている場合はポリバリコンが20pF/2連であるか、連結が甘いかどうかなどを確認した上で調整するのが望ましい。ポリバリコンの交換によって大きな相違点は出ないはずなので。
(これで正しいかどうかはわからないが、MX-14S/21Sで今のところ不具合は出ていない)

調整方法は、可能で有ればシグナルジェネレータ等を用いてMX-14Sに搭載されたVXOクリスタルで同調可能な下限の周波数を出力し、MX-14Sで受信しながら出来ればいいのだが私はそんな高価な機械を持っていない。そこでFT-817をダミーロードに接続し、ダミーロードから漏れている微弱電波をMX-14Sで受けながら調整した。
MX-14Sに装着されているクリスタルは14X-20SだったのでMX-14Sのチューニングダイヤルを下限に合わせ、FT-817から14.200MHzのCW波を送信しつつCWトーン音が聞こえるポイントまでMX-14SのTC1を回した。次にFT-817の周波数を14.250MHzにし、MX-14Sのチューニングダイヤルを上限に合わせ、FT-817から再びCW波を出す。MX-14S側でトーン音が受信できればいいが、出来ない場合はトーン音が聞こえるまでL1を回す。一発で決まらない場合もあるので上記の作業を繰り返すが、L1とTC1以外は手を触れない方がいいと思う。
(他の調整で必要かもしれないが、私はこの場合触れない方が良いと判断した)
クリスタルの精度などによって50KHzの可変幅が60KHz近い場合や50KHzを切る場合もあるので状況に応じてL1とTC1の調整を行う。FT-817から出す周波数を14.205MHz/14.245MHzにして調整するのも一つの手だ。
最後に、MX-14Sの同調ツマミを中間にして同じように送受周波数の確認を行う。ポリバリコンを間違ってAMラジオ用などの大容量タイプを入手してしまった場合にはここで判明する。AMラジオ用などのポリバリコンは340pFなど容量が絶対的に多いので、ピコトラに使用すると14X-20Sの場合では中間の周波数である14.225MHzあたりのはずが14.240MHzなど高い周波数となるはずだ。(確か最初の10KHz分のメモリで14.200MHz〜14.240MHzの周波数変動となり、残りは40KHz分のメモリでゆっくりと10KHzの変動となるグラフをどこかで見た記憶がある)

ピコトラは送受共用の同調回路となっているので受信を合わせれば送信も同じになるはずだが、最後に念のためとしてMX-14Sにダミーロードを繋ぎ送信周波数をFT-817で確認した。
結果としては受信と同じ周波数が送信されていたので問題無しと思われる。

ラジケータそばのL1とTC1を調整する
調整にはコアドライバーなどが必要。

作業を終了する前に、アッテネータやCW/SSBモード選択スイッチなど一通りの機能の動作を総チェックした。
これは配線の戻し忘れなどが無いことを確認するためだ。
(本来なら目視で配線確認をしてから通電するのが良い)
バリコンを交換したピコ14Sは同調ツマミのカスカスした感触が消え、しっとりとした良い感触に戻った。
私のライセンスでは運用できないRigなのでMX-14Sはボディを軽く磨いて丁重にビニール袋へ戻し、箱の中で長い眠りについた。


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