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ミズホ通信 ピコ6Z

MIZUHO 6m SSB/CW QRP TRANSCEIVER MX-6Z

MIZUHO MX-6Z

MIZUHO MX-6Z JARL認定番号は初代のピコ6と同じというMX-6の2代目。
ピコ6が発売された翌年の1982年8月に発売となったが、ピコ6から幾つかの変更が行われている。
送受の切り替え部分がピコ6では全て機械式でコントロールされていたが、ピコ6Zではトランジスタを使用したスイッチング回路になって外部マイクからのPTTコントロールが可能になった。
パルスノイズへの効果が高いノイズブランカ回路が新規に搭載され、リニアアンプのキャリアコントロール用にアンテナ端子へ9Vの電圧供給も行われている。

 ピコ6で使われていたSSB専用のクリスタルフィルタは在庫がなくなってしまい、ピコ6Zでは同じ輸出CB無線向けだがAM/SSB兼用のフィルタに変更された。このフィルタが帯域幅4KHzであることと、IF周波数が7.8MHzであることから11.2MHzで設計されていた局発に変更が生じ、ピコ6Z専用のVXO用水晶が必要とされる。(MX-6/MX-6Z/MX-6SのラインでMX-6Zだけ水晶の周波数が違う)

 外見的には内蔵ホイップアンテナのかわりにBNCコネクタが搭載され、ピコ6ではオプションとしてユーザーが装着していた外部マイク端子がフロントパネルに標準配置されるようにもなった。
フロントパネルにはノイズブランカのON/OFFスイッチに加え、電源投入時にはLEDが点灯して電源の消し忘れがないようにもなっている。
電源も006P電池から単四乾電池6本を使用する専用フォルダが付属しているが、ピコ6Zは充電回路を持たないので単四型のニッカド電池などは充電できない。
電池の入れ替えも電池部分の蓋が別個に外れる構造となり、ドライバーでネジを緩める必要性がなくなった。006P乾電池用のスナップも付属していたが、これはピコ6のオプションに設定されていた006P型のニッカド充電池の為のものだった。

 回路図を見るとピコ6ではミキサ後に終段まで2段構成となっていたが、ピコ6Zでは3段構成となっている。終段の石も2SC731から2SC2053に変更されており、充電型の006P電池の低い電圧でも余裕を持った出力が出るようになっているが送信出力は250mWのままだ。

 外部マイクでPTTコントロールが可能となったことからオプションに外部スピーカマイクM-4が設定され、5WリニアアンプのPL-6もアンテナ端子から供給される9V電圧でコントロールされるので接続がアンテナケーブルのみとなる。(MX-6のリニアアンプPB-63では送受の切り替え連動に別配線を必要とした)
取説には電源ランプのLEDを送信時のみ点灯させるオンエアLEDにする方法やSメーターを搭載する方法などが掲載されており、ピコ6から更に一歩踏み込んだ内容で書かれている。
欠点というか注意点として本体PTTスイッチがプッシュロック式なので移動時に押されたままとなってしまい、移動先で電源を投入すると即送信状態になってしまうことがあった。

 ピコ6と比較すると全体的に完成度が高くなっており、ピコ2で先に市場に出てはいるが局発部とトランスバータ部の基板構成はMX-10Z/MX-15と展開されていった。(MX-15はRIT回路も積んでいるので微妙に違ってはいるが)
翌年の1983年にピコ6Sが発売されるまで50MHz帯の小型ハンディとして販売され(実質的にはMX-6SとMX-6Zで併売だったが)かなりの台数が市場に出ていったと思われる。



MIZUHO MX-6Z トップパネル

初代のMX-6と似たレイアウトだが、ノイズブランカのスイッチが増設されている。
また、アンテナがBNC外部接続となったのでANTジャックが消えて外部マイク端子が標準装備となった。
チューニングダイヤル右上にはLEDが1つ付加されたが、これは電源ONで点灯し続ける。
明るさが無くなってきたら電池が消耗したという判断が出来るものらしい。

MIZUHO MX-6Z ボトムパネル

ピコシリーズで一番シンプルなボトムパネル。
外部電源ジャックと外部キージャックの2つだけとなる。

MIZUHO MX-6Z 電池ボックス

単四電池を6本使用する電池ボックス。
電圧の問題などがあるのか、残念ながら充電する仕組みは持っていないようだ。
(ピコ6Sでは乾電池の場合6本、充電電池の場合は1.2Vなので7本という構成になっている)



[ MX-6Z 取扱説明書 ]

ミズホ通信のCW/SSBトランシーバーMX-6Z(ピコ6Z)の取り扱い説明書です。
掲載にあたってはミズホ通信(株)の高田OMより承諾を得ております。

利用に関して当方では責任を負いませんし、また、ミズホ通信に迷惑のかからないようお願いします。
 また、取り扱い説明書およびファイルの著作権はミズホ通信にあります。
 業務利用や利益を伴うなど個人の趣味の範疇を超える利用に関してはミズホ通信へ確認を取るようお願いします。

 ・PDFファイルの閲覧にはアドビ社のAcrobat Reader(R) Ver.5.0以降のソフトウェアなどが別途必要です。
 ・ファイルは高解像度と低解像度の2種類を用意してあります。
 ・操作の確認やPC画面で閲覧のみの場合には低解像度版
(Low resolution)で十分です。
  印刷や回路図の詳細を調べる等の場合には高解像度版
(High resolution)をお使い下さい。


model
High resolution Low resolution

MX-6Z mx-6z_h.pdf
9,750KB
mx-6z_l.pdf
1,470KB


■MX-6Z 定格

[一般仕様]
周波数 50MHz帯
電波形式 SSB(USB), CW
使用半導体 5 IC, 8 TR, 7 FET, 26 Di
電源電圧 DC 9V
  〃   単4(UM-4) 6本
消費電流 RX…無信号時 40mA
TX…最  大 180mA
周波数安定度 初期変動±500Hz
その後100Hz/30分(25℃)
空中線インピーダンス 50Ω
外形寸法 (W)66 x (H)39 x (D)142mm
重量 500g (電池含む)

[送信部]
最大出力 250mW
不要輻射 40dB以下
変調方式 平衡変調
搬送波抑圧比 40dB以上
側波帯 〃   〃

[受信部]
受信方式 シングルスーパー
感  度 0.5μV入力時 S/N 15dB
中間周波数 7.8MHz

[局発部]
発振方式 可変水晶発振
出力周波数 42MHz帯


【資料】開局申請について

取説には開局申請として以下の内容が記されている。
(MX-6Z販売当時の申請内容となるので注意)

電波の形式 A3J 電信モードも申請するときは[ A1 ]を追記
周波数 50MHz帯  
空中線電力 0.25W  
発射可能な電波の形式 A3J 電信モードも申請するときは[ A1 ]を追記
周波数の範囲 50MHz帯  
変調の方式 平衡変調  
終段管の名称、個数 2SC2053 x 1  
電圧入力 8.5V 0.6W  
JARL登録機種番号 MK-7  



【参考】2005年より変更された申請書式の記入例
 ※自分が解釈した内容で書いているので、間違いが有った場合にはご容赦下さい。

◇「無線局事項書及び工事設計書」の記入例(表面一部)
MX-6Zのみ
の場合
13 電波の形式並び
 に希望する周波数
 及び空中線電力
希望する周波数 電波の形式 空中線電力
28M
3VA 4VA 3VF 4VF
W
50M
3VA 4VA 3VF 4VF
0.25 W
144M
3VA 4VA 3VF 4VF
W
MX-6Z+PL-6
の場合
13 電波の形式並び
 に希望する周波数
 及び空中線電力
希望する周波数 電波の形式 空中線電力
28M
3VA 4VA 3VF 4VF
W
50M
3VA 4VA 3VF 4VF
5 W
144M
3VA 4VA 3VF 4VF
W
緑字:電話モードのみで申請する場合に記入。
赤字:電信モードも申請する場合に記入。
青字:電話/電信モード共通の記入項目。


◇「無線局事項書及び工事設計書」の記入例(裏面)
装置の区別 変更の種別 技術基準適合証明番号 発射可能な電波の形式
及び周波数の範囲
変調方式 終段管 定格出力
(W)
名称個数 電圧
第 送信機 □取替 □増設
□撤去 □変更
(ここは空欄のまま) J3E , A1A{50MHz帯 平衡変調 2SC2053 x1
2SC1971 x1
8.5 V
13.8
0.25W
5W
[装置の区別][変更の種別]には申請時に最適な内容を記入。
緑字:電話モードのみで申請する場合に記入。
赤字:電信モードも申請する場合に追加記入。
青字:リニアアンプ PLシリーズと組み合わせて申請する時に追加記入、自作リニアの場合などは要変更。

注1:技適機種ではないので、TSS株式会社への保証願い申請が別途必要。
注2:リニアアンプPLシリーズはJARL登録されていないので工事設計書に送信機系統図の添付が必要。



◇「保証願書」の記入例
送信機番号 変更の種別 送信機の名称等 接続するブースタの名称等
(ブースタ等を使用している場合のみ)
附属装置の有無
(有る場合のみレ印)
取替 増設 変更
第◎送信機 MX-6Z PL-6 □ 有
[変更の種別]には申請時に最適な内容を記入。
緑字:MX-6Zのみで申請する場合に記入。
青字:リニアアンプ PL-6と組み合わせて申請する時に追加記入、自作リニアの場合などは要変更。


【資料】MX-6ZのVXO用オプション水晶

MX-6Zには以下のオプション水晶が取説に記載されている。
水晶周波数は手持ちのMX-6Zに装着されている水晶から数字を拾っているが、(斜体)表記の周波数は計算で出した周波数なので参考情報として扱って貰いたい。

品 番 送 受 信 周 波 数 X'talの周波数 備  考
6X-00Z 50.000 - 50.050 MHz (14.08366 MHz)  
6X-05Z 50.050 - 50.100 MHz (14.10033 MHz)  
6X-10Z 50.100 - 50.150 MHz (14.11700 MHz)  
6X-15Z 50.150 - 50.200 MHz 14.13366 MHz  
6X-20Z 50.200 - 50.250 MHz 14.15033 MHz  標準装備周波数 
6X-25Z 50.250 - 50.300 MHz (14.16700 MHz)  
6X-30Z 50.300 - 50.350 MHz (14.18366 MHz)  
6X-35Z 50.350 - 50.400 MHz (14.20033 MHz)  
6X-40Z 50.400 - 50.450 MHz (14.21700 MHz)  
6X-45Z 50.450 - 50.500 MHz (14.23366 MHz)  
※上記の品番意外にも特注で発注が可能と取説に記載あり。


■終段トランジスタ交換・バリコン交換 (2005.02.11)

このピコ6Zは入手時のチェックで出力が10mWしか出ておらず、バリコンもガリ(?)が見受けられ、所によっては受信音が消えてしまう程の完調とは言えない状態だった。
バリコンはピコ6用にミズホ通信からピコ用ポリバリコンを分けて貰ったが、調べてみるとFM用の2連ポリバリコンであれば使用可能ということなのでピコ6Zには秋葉原で入手したFMラジオ用の2連ポリバリコン(20pF x 2)を使用してみた。
既にピコ6でバリコン交換は行っているので、基板の配置も似ているピコ6Zは簡単にポリバリコンの交換を終えた。

次に10mWしか出ていない出力の問題だが、ミズホ通信から分けて頂いたコピーの取扱説明書にある回路図を元に終段周りのトリマやコイルなどを調整するが、出力は10mWのままだ。
その10mWの出力をFT-817などでモニタする限りは変調などに異常は見られず終段手前のミキサ回路までは正常に動作しているように思える。
所詮は素人見解、バイクや車でよく聞く「とりあえずスパークプラグを新品に交換」と同じく、「とりあえず終段デバイスを交換」とした。
このピコ6Zに使用されている終段はトランジスタ2SC2053だ、高額であれば躊躇したかもしれない2SC2053の値段を調べてみるとサトー電気で105円…安い。
2月の3連休の初日に2SC2053を調達しに町田まで出かけ、早速ピコ6Zの終段トランジスタを交換してみた。

交換後にいつも使用しているFCZ研のQRPパワーメータを接続して出力を計ってみるとLowレンジではメーターの針が振り切る、ということは100mW以上は出ている。
レンジをHighの2Wレンジに切り替えて出力を計ると200mW出ており、最後に終段周りのトリマとコイルを微調整したところ250mWの出力となった。
素人見解は今回に限っては当たっていたようで、終段トランジスタの交換のみでピコ6Zは出力を取り戻した。
電池カバーを除けばジャンク出品のピコ6Zが400円で実働品になり、このバイクのレストアと一緒で自分の未熟な技術でも機能を戻すことが出来た瞬間がたまらない。
さて、欠品の電池カバーはどうしたものか。


2SC2053 MIZUHO MX-6Z
交換した終段Tr 2SC2053。
2SC741と比べてコンパクトになっている。
最後の調整を行っている状態。
左上に見えるのはFCZ研究所のQRPパワーメータ。


■ケース交換 (2005.02.20)

終段トランジスタを交換して機能的には稼働可能となったピコ6Zだが、電池カバーが無い状態だった。
また、ボディもトップ部分の角は変形しているなど手荒い扱いを受けた跡がある。
格好を付けるためにはともかく電池カバーは欲しいと思っていたが、ミズホ通信も工場移転の際に出してしまったらしく補修部品としても在庫は確認出来なかった。
自分でアルミ版を叩いて自作するかと考えていたところ、またもやYahoo!オークションでジャンクピコ6Zが2台まとめて出品されているのを見つけたので落札した。

届いた2台のピコ6Zは出品者のタイトル通り確かにジャンク品で、乾電池も入ったままの液漏れ状態に加え片方のピコ6Zはボディ全体がサビに覆われた本当のジャンクだった。
しかし、残る片方のピコ6Zはボディもそこそこ良いコンディションで肝心の電池カバーが綺麗な状態で残っている。
ケースを開けてみると若干のサビは認められるが進行が激しいわけでもなく、スピーカー等を外して洗浄し、外装を磨く意味でバイク整備で使っているコンパウンドが微量に含まれる液体ワックスで磨くと見事な見栄えのボディに戻った。
当初は電池カバーだけが目当てだったのだが、これは勿体ないと基板のチェックを始めるが残念ながらこちらはシャーシも含めて小錆が多い。
基板へ通電させて動作確認を行ってみるとバンド切り替えスイッチなどは接触不良だがバリコンは正常、出力も9.5Vで250mW出ており稼働品のようだ。
しばらく考えた末、ボディパーツを既に持っていたピコ6Zと交換することにした。
ボディを交換したピコ6Zはこれでレストア終了となり、ジャンク品のニコイチ+終段tr交換+バリコン交換で復活した。
落札した2台のピコ6ZにVXOクリスタルがオプションで装備されていれば嬉しかったのだが、残念ながらどちらも初期装備の6X-20Zしか装備されていなかったので、後日にミズホ通信へクリスタルの発注について相談しようと思っている。


■各種ジャック・スイッチ交換 (2005.03.12)

局面の設備変更も完了して声を出せるようになったピコ6Zだが、マイク端子などが古いままだった。
部品代としてもMIC端子などの3.5φジャックは1個で30円程度と安いのですべて交換した。
ついでにアンテナのBNCコネクタも交換してしまったが、DCジャックだけはネジで止める部分が違うものしか見つからず、今回は諦めることにした。
秋葉原は以外とパーツ探しに不便な街になっていることを痛感した1日でもあった。


MIZUHO MX-6Z コネクタ等を交換後したトップパネル
これだけで雰囲気が変わる。

 また、トップパネルに配置されている内蔵CWキーのスイッチも交換した。
これは特に不具合を感じていた訳ではないのだが、交換できるときに作業してしまおうという考えからだった。私が子供の頃はスイッチ一つ選ぶにも色々な種類・メーカーがあって困ったものだが、今ではこの種類のミニスイッチは1種類しか見かけなかった。カタログには複数のスイッチが掲載されているのかもしれないが、アナログパーツに選択の余地が無くなってきているのは確かかもしれない。
 DCジャックだけはネジ止めの箇所が奥になるような製品しかみつからず、接触不良などの問題も現在は無いことから手を付けないことにした。PTTスイッチもロックした時(送信時)にボタンを指で軽く押したりすると送信音声が途切れ、受信時もスイッチに横から押したりするなどで受信音が途切れるなど接触不良となることがあったので新品に交換した。交換の際にPTTスイッチはオリジナルと同じプッシュロック式ではなく、単なるプッシュONスイッチに交換した。ピコトラSと同じ通常のリターンスイッチとなるのでSSB運用時は便利になるがCW運用時にはPTTロックSWを別に設けなければならない欠点がある。

これでピコ6Zのレストア?は完了する予定。
今はまだ季節的に寒いので、4月に入ってから本格的に使ってみようと思う。


MIZUHO MX-6Z 取り外されたオリジナルのPTTスイッチ。
オリジナルはアルプス製のスイッチを使用しているが、現在はブランド不明のスイッチしか入手できず一抹の寂しさを感じる。

MIZUHO MX-6Z ソフトケースが入手できないのでピコトラスーパー用のソフトケースを加工した。
入手時からハサミが入ったケースだったのでアンテナ周りが少しだけ寂しくなっている。
初期のケースは塗装が剥がれやすいのでケースは必需品とも言える。

MIZUHO MX-6Z PTTスイッチと電源/ボリュームスイッチの部分はカッターで穴をあけた。

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