ミズホ通信 ピコ6用 3Wリニアアンプ PB-63
3W LinearAmplifier for MIZUHO Pico6 [ PB-63 ]
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PB-63は初代ピコトラであるMX-6専用の3Wリニアアンプとして発売された。
詳しい経緯は知らないが、PB-63は最初にCQ Hamradio誌 1982年3月号に「ピコ6(MX-6)専用 リニアアンプの製作〜ピコ6を出力アップして、DX QSOを楽しもう!」という記事が掲載され、その記事の最後に「なお、本器のプリント基板キットが、ミズホ通信株式会社から発売される予定があるとのことです。詳細は、ミズホ通信へ問い合わせてみてください。」とあり、雑誌の記事として詳細まで紹介された後にキットとしての型番が付与されている。
また、「プリント基板キット」とある通り、PB-63はバラキット形式だがPL-2/PL-6以降のピコトラ用リニアアンプと違ってケースや化粧板などの外装パーツは一切付属していない。
キットを購入したユーザーは自分の好みのケースを別途調達し、コネクタなどのケーブル類も別の揃える形式だった。
基板サイズは約7cm x 6cm、ヒートシンク・ビスブラケットも含めた高さは約3.5cmと全体的にコンパクトなサイズに収まり、電源には12〜13.8V/1Aで十分となっているので移動運用にも十分使えるスペックだ。(時間を制限すれば単三型ニッカド電池でも十分に機能を発揮できるはず)
回路図などを見る限りは以降に登場するピコトラ専用リニアアンプPLシリーズと似ている部分もあるが、親機となるMX-6側の都合で送受切り替えを行う為のキャリアコントロール回路は装備されていない。(装備しても意味がない)
また、設計当初は50MHz帯のモノバンドアンプとしていたからか全体的に部品点数も少なく、コイルの数や各種C/Rの数もPLシリーズと比べて少ない。
(ピコトラ本体へ電源を提供する9V端子はPB-63から装備されている。)
また、リニア用の石として2SC1945が採用されているが、その2SC1945のバイアス回路に採用されているダイオード1S1555はベース側に配置され、エミッタ側に設置されているヒートシンクの熱をシリコングリスで伝導させる配置になっている。
PLシリーズでの1S1555はベース側ではなくエミッタ側に配置され、空中配線のようにGNDに落とされているのでオーバードライブ対策として配置されるにしても使い方が違うようだ。
ミズホ通信からキットとして出荷された正確な日付は不明だが、恐らく誌面掲載から2〜3ヶ月以内になる1982年春頃には市場へ流通していたものと推測される。
しかし、付属の取説を見ると「本機は、CQ ham radio 1982年3月号に掲載された MX-6(ピコ6)用リニアアンプと全く同じ物で、ケース類を除いた基板上のパーツとピコ6へ新設する為の特殊なジャック類を含んだバラキットです。従って製作等の詳細は、CQ誌の記事を参照願います。」と明記されており、回路図・部品一覧・調整方法など最低限必要な情報は掲載されているものの、手巻きで作成するコイルの直径・巻数などは誌面記事を参照しながら製作する前提になっていた。
誌面記事から取説に伝達されたなかった部分は主にアンプの設計をする方針や部品選定に関係する情報などに限定され、キットを購入したユーザーは組み立て・調整までは付属の取説で十分な作業を行うことが出来たが、下記の手巻きコイルに関する情報だけは欠落していた。
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◆CQ ham radio 1982年3月号記事に掲載されていた「第1表 コイルの巻き方法」 |
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コイル |
コイル
内径 |
巻き形状 |
巻き幅 |
巻き数 |
備考 |
L1 |
7Φ |
スペース巻き |
8mm |
3回 |
※線材…0.6Φポリウレタン線 |
L2 |
7Φ |
スペース巻き |
7mm |
5回 |
L3 |
7Φ |
スペース巻き |
8mm |
8回 |
L4, L5 |
7Φ |
密着巻き |
8mm |
12回 |
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私が入手したPB-63は組み立て途中の品だったので購入当初の状態を伺い知ることは出来ないが、個人的な推測では別製品であるPL-6Sキットでは手巻きコイルが密着巻きで巻かれた状態がキットの部品として入っていたので、PB-63も同じように巻かれていたのかもしれない。
ところで、このPB-63は事実上MX-6専用リニアアンプになってしまう。
と言うのもMX-6本体にはリニアアンプと送受信モードを連動させる為のキャリアコントロール信号を送信電波に混入させる為の仕組みを持っておらず、MX-6底部のオプション端子に増設したPB-63連動用の配線を接続して使うようになっている。
よって、MX-6では以降に発売されるPLシリーズをドライブすることが出来なければ、MX-2/6Z以降のピコトラではPB-63をドライブすることは出来ない。(MX-2/6Z以降のピコトラに物理的なコントロール信号線を増設し、PB-63と接続すれば使える)
また、MX-6自体が外部マイク側から送受切り替えを行うことが難しい仕組みになっているので、PB-63を接続した状態でも運用時はMX-6本体のPTTスイッチで送受切り替え操作を行わなければならず、スマートな使い勝手とは言い難い。
しかし、250mW(実際に乾電池で運用すると十分にゲインを稼ぐことが出来ない回路構成の為に200mW程度に出力が落ちてしまうが)の出力を3WにアップさせてくれるPB-63は部品の入手を通販に頼るしかない地方の人などには重宝されたのではないだろうか?(1980年代半ばになると地方のパーツ屋も廃業が目立ち、通販もインターネットはおろかパソコン通信さえも存在しない時代であったので郵便か電話での申し込みしか有効な手段がなく、しかも送金は銀行端末まで行かねばならず、送金手続きも平日のみ、しかも3時で終了だった時代でもあった)
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PB-63上部全景
72x64mmの基板に全てが載っている。
基板のパーツ番号はMK 1139、パーツ面には回路図に記載されているパーツ番号がシルク印刷されているが、キット型式番号である[PB-63]の文字は存在しない。
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リレー部分
送信・受信の切り替えリレーは後のPLシリーズでも同じもRZ-9が採用されている。
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[ PB-63 取扱説明書 ]
ミズホ通信の3Wリニアアンプ基板キット PB-63 の取扱説明書です。
掲載にあたってはミズホ通信(株)の高田OMより承諾を得ております。
利用に関して当方では責任を負いませんし、また、ミズホ通信に迷惑のかからないようお願いします。
また、取り扱い説明書およびファイルの著作権はミズホ通信にあります。
業務利用や利益を伴うなど個人の趣味の範疇を超える利用に関してはミズホ通信へ確認を取るようお願いします。
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