ミズホ通信 ピコ15
MIZUHO 15m SSB/CW QRP TRANSCEIVER MX-15
|
|
MX-15(通称ピコ15)はピコトラシリーズでは初のHF対応機種として1982年11月に発売された。
スペック的には21MHz帯のUSB/CWモノバンド機となり送信出力は300mW、既存のピコトラと同じくVXOは1つの水晶で50KHz変化させて最大2個のVXO水晶が内蔵可能、電源スイッチを兼ねるAFゲイン調整のボリュームはボディサイドに設置されPTTスイッチもプッシュロック式だ。
ボトムパネルも外部DCジャックと外部CWキーと外部VXO兼用のジャックの2つしかなく、電源にはピコ2/6Z/10Zと同じ単四乾電池を6本使用する特殊な電池ケースが採用され、充電電池などへの充電回路などは持っていない。
基板構成もSSBジェネレータ部とトランスバータ部に別れた2枚構造となっており、SSBフィルターも輸出用CB無線のAM/SSB兼用7.8MHz/4KHz帯域フィルターが使用されている。
その為、11.2735MHz帯のクリスタルフィルタを使用する後継のMX-21SとVXO水晶に共通性は無くMX-15専用となる。 MX-15では最も特徴的な機能としてFUNCTIONスイッチによりVXO周波数を内蔵から外部へ切り替えが可能になっている点がある。
その機能に対応する外部機器として外部VXOのVX-15が発売されたが、これはVX-15のフロントパネルにあるクリスタルソケットへ水晶を差し込んで使用する昔ながらの方式をとっておりMX-15だけに用意された周辺機器となった。
その他にもMX-15はピコトラシリーズの中で毛色が変わった機種として感じる点が多い。
その理由は初代のMX-6から発展したMX-2/6Z/10Z世代と一世を風靡したピコトラスーパーシリーズの中間に位置するような要素が組み合わされている点にあると推測している。
クリスタルフィルタはMX-2/6Z/10Z世代と同じ7.8MHz帯を採用し、基板構造もジェネレータ部とトランスバーター部に別れてジェネレータ部は共通の設計と思われる。(トランスバーター部は後述の仕様追加により若干の差が認められる)
ロック式のPTTスイッチやボディサイドに位置する電源スイッチを兼ねたAFゲインコントロール、そして充電回路を持たず単四電池を6本使用するミズホ特製の電池ケースに紛失しやすい蓋など同じ要素が引き継がれているものの、トップパネルを見るとS/RFメーターにRIT、そして外部VXOへの切り替えスイッチなど新たな機能が追加されている。
ツマミの大きさやスイッチの配置は異なるが機能的にはピコトラスーパーシリーズにも引き継がれた要素が多く、S/RFメーターはピコトラスーパーシリーズでも同じタイプが採用されている。
また、外部スピーカー/外部マイク端子も配線・ピンのサイズ・端子間のピッチピコトラスーパーシリーズに引き継がれており、オプションの外部スピーカーマイクMS-1はMX-15から発売されたオプションでもある。
このようにMX-2/6Z/10Z世代にピコトラスーパーシリーズの機能がミックスされた過渡的な仕様が多く認められ、野心的な機種としてリリースされたのではないかと思われる。
過渡的な製品としては一つだけ気になる点があるが、終段トランジスタに2SC2053ではなく2SC741が採用されている点だろう。
MX-2/6Z/10Zはご存じの通りヒートシンクを持たない2SC2053が採用されているが、MX-15には初代MX-6と同じヒートシンクを装備した丸缶タイプの2SC741が採用されている。
その為、終段トランジスタのサイズと配置場所(ヒートシンクをシャーシに近づけて放熱効果を高める処置が必要)やRIT回路の追加などもありトランスバーター基板はMX-2/6Z/10Z世代を流用せずに別設計の基板が採用され、結果的にMX-15専用トランスバーター基板となっている。
(MX-10Zが遅れて発売されるものの、この後の開発製品はピコトラスーパーシリーズで採用された1枚基板が採用されている為に他の機種への採用が確認されていない)
また、内蔵電池への充電回路についてもMX-15では採用されていないが、これは電池ケースの都合が理由と考えられる。
そして、MX-15だけに存在する仕様としてはオプションとして存在した外部VXOがあり、VXO周波数を内部と外部で切り替える発想はピコトラスーパーシリーズに引き継がれなかった。
雑誌の取材記事では21MHz帯のアマチュアバンド全域をカバーする外部VFOが試作品として存在した事実が公表されているが、MX-15が開発された頃のピコはコンポーネント化したオプションで機能を向上させる方針に傾いた設計だったのだろう。
この思想はピコトラスーパーシリーズでは薄らいでいると感じるが、どちらが良かったのかは誰にもわからないだろう。
MX-15が他のピコトラシリーズと大きく違うのは前出の外部VXOユニット VX-15だけではなく、オプションのサイドトーンキット「ST-1」が「内蔵」できる点だろう。
ピコトラスーパーシリーズでもサイドトーン機能に加えてセミブレークイン機能も装備したCW-2Sが発売されたが外部ユニットとしてリリースされていたので、山頂移動運用などでは荷物が一つでも少ない方が好ましいことが多くMX-15でサイドトーンユニットが内蔵というのは非常に便利であったと思われる。
このサイドトーンユニットの音量はAFゲインと連動して(ボディサイドのボリュームと連動して)音が出てくる仕組みになっており、音量調整の為にケースを開けなければならないCW-2Sよりは使い勝手に優れているのもかもしれない。
結果的にピコトラ本体内にサイドトーン機能を内蔵したのはMX-15とMX-2Fの2機種だけとなり、外部ユニットとして提供されたのはピコトラスーパーシリーズだけとなった。
(セミブレークイン機能はピコトラスーパーシリーズ用の外部ユニットCW-2Sのみが持ち、それ以外のピコトラでCW機能を持つ製品は全てフルブレークイン機能のみが付与されている。)
もう一つのオプションであるノイズブランカユニット NB-1は回路図を見る限りMX-6Z/2が装備していたノイズブランカ回路と同じであると見受けられるが、MX-15で標準装備ではなくオプションとなった理由は不明だが本体価格を低く抑える為に標準装備とならなかったのだと想像している。
この後に発売されるピコトラスーパーシリーズの初代機種MX-6Sのキット版であるMX-6S(K)ではノイズブランカだけではなくSメーターやRIT機能すらオプション扱いとして発売され、全ての機能を搭載した完成品と比較すると6千円以上の価格差となっていた。
(その後、MX-6SRではノイズブランカ機能のみがオプションとなり、SメーターおよびRIT回路についてはキットでも標準装備となった)
|
|
|
|
|
|
|
フロントパネル
ピコシリーズでもこのデザインはMX-15のみの採用となっている。
大きなRIT調整ツマミとFUNCTIONスイッチの[VXO]が特徴的だ。
小型な部類のSメーターはピコトラスーパーシリーズでも同じものが使用された。
尚、スピーカーマイクMS-1が使用可能だ。
(SP/MICジャックの距離・配線などが同じ)
|
|
|
|
リアパネル
ピコ2/ピコ6Zと共通のパネルデザイン。
この部分にはMX-15特有の部分が無いのだが、一カ所だけ違う点がある。
[EXT KEY]とある外部キージャックがMX-15のみ外部VXO用の接続端子にもなっている。
この機能はMX-2/MX-6Zに無いのでパネルデザインは同じだが、機能的に若干の違いがある結果になっている。
|
|
|
|
ケース前面
ケースもピコ2/ピコ6Zと共通だ。
|
|
|
|
ケース背面
背面ケースもピコ2/ピコ6Z共通。
無くしやすい電池部分のカバーも同じ。
|
|
|
|
電池ケースを取り出したところ
これもピコ2/ピコ6Zと共通。
画像の電池ケース、実はピコ6Zに装着されていたもの。
入手したピコ15は電池ケースが初代ピコ6と同じように006P用の端子に変更されていた為に、ジャンク品のピコ6Zから持ってきた。
そのために錆が少々多い状態となっている。
|
|
|
|
ピコ15内部
ピコ2/ピコ6Zと同じく2枚基板の構造となる。
上がSSBジェネレータ基板で、下がコンバータ基板となる。
|
|
|
|
オプションのVX-15/PL-15と一緒に
ピコ15には10Wへパワーアップするリニアアンプ PL-15と、VXO水晶を交換しやすくした外部VXOユニット VX-15が発売されていた。
MX-15にオプションユニットを装備した姿は、一昔前のモノバンド固定機の要素をほぼ揃えているような気もするが、ひいき目過ぎるだろうか?(性能は二の次、あくまで要素の話)
このセットに自作のスタンドマイクがあれば、机の上にちょっとした15mモノバンド固定機が出現することになる。
メーカー製固定機が高価だった頃には選択肢の一つになったであろう。
|
|
|
|
[ MX-15 取扱説明書 ]
ミズホ通信のCW/SSBトランシーバーMX-15(ピコ15)の取扱説明書です。
掲載にあたってはミズホ通信(株)の高田OMより承諾を得ております。
利用に関して当方では責任を負いませんし、また、ミズホ通信に迷惑のかからないようお願いします。
また、取り扱い説明書およびファイルの著作権はミズホ通信にあります。
業務利用や利益を伴うなど個人の趣味の範疇を超える利用に関してはミズホ通信へ確認を取るようお願いします。
・PDFファイルの閲覧にはアドビ社のAcrobat Reader(R) Ver.5.0以降のソフトウェアなどが別途必要です。
・ファイルは高解像度と低解像度の2種類を用意してあります。
・操作の確認やPC画面で閲覧のみの場合には低解像度版(Low resolution)で十分です。
印刷や回路図の詳細を調べる等の場合には高解像度版(High resolution)をお使い下さい。
|
|
|
|
■MX-15 定格 |
|
|
|
|
[一般仕様] |
|
|
|
周波数 |
|
|
21MHz帯 |
電波形式 |
|
|
SSB(USB), CW |
使用半導体 |
|
|
5 IC, 8 TR, 6 FET, 32 Di |
電源電圧 |
|
|
DC 9V |
〃 |
|
|
単4 (UM-4) 6本 |
消費電流 |
|
|
RX…無信号時 45mA
TX…最 大 180mA |
周波数安定度 |
|
|
初期変動±500Hz
その後100Hz/30分(25℃) |
空中線インピーダンス |
|
|
50Ω |
外形寸法 |
|
|
(W)66 x (H)39 x (D)142mm |
重量 |
|
|
490g (電池含む) |
|
[送信部] |
|
|
|
最大出力 |
|
|
300mW |
不要輻射 |
|
|
40dB以下 |
変調方式 |
|
|
平衡変調 |
搬送波抑圧比 |
|
|
40dB以上 |
側波帯 〃 |
|
|
〃 |
|
[受信部] |
|
|
|
受信方式 |
|
|
シングルスーパー |
感 度 |
|
|
0.5μV入力時 S/N 15dB |
中間周波数 |
|
|
7.8MHz |
|
[局発部] |
|
|
|
発振方式 |
|
|
可変水晶発振 |
出力周波数 |
|
|
29MHz帯 |
|
|
|
|
|