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LEDテールを組み込んだGPZ900R

GPZ900R ■LEDテールランプの製作 v.3.0■

【注意】
このページの情報を元にして行われた改造に関して当方は一切の責任を負いません(負えません)ので、改造は個人の責任の上で行って下さい。

私のGPZ900Rは何故かテールランプの電球がよく切れる。
常時点灯式であるのが原因なのか、後尾灯のみが切れることが多くブレーキランプが切れることはない。
しかし、たまに2個装備されている電球の両方で後尾灯が切れてしまい、乗り出す前に慌てて電球交換ということもある。
そのような状況であったことが、対策としてLED(発光ダイオードを使用したテールランプの制作を2002年から開始、初期の試作品(v.1.0)から本制作バージョン(v.2.0)を経て今回は部品構成を簡略化したバージョンを制作した。


■過去バージョン■


Version1.0 ユニバーサル基板にLEDを配置した試作バージョン
部品と部品の間を手作業で配線した為に、走行中の振動で断線は発生した。
3ヶ月ほど使用したが、断線を機にプリント基板を使用したバージョンへ移行。

Version2.0 試作バージョンの回路をベースにプリント基板で作成した本制作バージョン
ひたすら安全策に偏った方針で作ったために思ったより複雑な構成となった。
しかし2年近く使用してトラブルはなし。


■構成■

◆部品

LEDにTAIWAN OASIS TOL-50aURsCEs (2.25v/20mA/12000mCD)と、日亜化学工業のNSPW310BS(3mm径/1.27cd/3.6V/広指向角タイプ)を使用。
基板はサンハヤト製感光基板のガラス樹脂基板を採用し、電源ラインの確保は前回同様に電球ソケットを改造したものを再利用する。

◆構成内容

v.2.0では別々に設定していた後尾灯と制動灯については1つのLEDで共用することにした。
TOL-50aURsCEsを40個使い、5個1列として4列×2で計8列。
ライセンスランプ用にNSPW310BSを4個使用し、基板下部に均等配置した。
制動灯は定格通りに整流した状態で点灯させ、後尾灯の時は抵抗で電圧・電流を制限して点灯。
2系統の電流が流れるために、逆流防止の為にダイオードを2個使用した。
以前のバージョンではLED保護のために組み込んでいた定電圧ダイオードなども一切使わず、電流制限も1/6Wタイプの抵抗を制限抵抗として使用。
これにより以前のバージョンまで使用していた三端子レギュレータは使用しなくなり、基板1枚というシンプルな構成になった。 欠点として入力電圧の上下に対して明るさが如実に変化する構成となるが、GPZ900R自体の電圧は大きく変動しないと想定して無視することにした。
一番負荷が大きいデバイスである整流用ダイオードが破損・破壊した時の保険としてテールランプのパターンを上下2つに分け、本来なら2個で済む整流用ダイオードを4個使い、部品が1つ死ぬだけで全てが使えなくなることは無いようにした。
装着方法に関してもv.2.0と同様にノーマルのテールランプに戻せるようテールユニットには極力手を加えず、固定方法も同じとした。


■製作■

◆電源ラインの確保

LEDテールランプ自体がいつでもノーマル状態に戻せることを全体に作っていることから、電源の供給先として純正テールランプの電球ソケットを選んだ。
電球のガラスを撤去し、フィラメントも取り除いて配線を3本だけ残し、そこにコードを接続する。

プライヤで挟まれた電球の画像

ガラスを破壊された電球の画像

この作業はガラスを粉砕する危険な作業となる。
私の場合はビニール袋の中で作業を行ったが、ガラスが砕け散る瞬間はかなりの衝撃だったので袋を2枚重ねにするなど安全に配慮する必要があるだろう。

袋の中で作業をする図

ガラスなどを破壊したらフィラメントに接続されていたリード線を3本だけ残し、残りは除去。(ガラスの破片などで手を怪我しないように注意が必要)
ソケットの奥にはガラスが結構あるのでニッパーなどの工具を使い出来る限りガラスを取り除いた。
リード線には熱収縮チューブをかぶせてショートしないようにし、ホットボンドで固定。

ホットボンド漬けの電球ソケット [ホットボンド漬けの電球ソケット]

この方式の利点は純正のテールランプは構造上、防水対策が行われているので回路を漏電から守れる点と、使用中にトラブルが発生(たとえばツーリング中など)してもガソリンスタンドなどで簡単に入手可能な23/8Wなどのノーマル電球に戻すことが簡単なことが挙げられる。
制動系の動作を後続車両に示す唯一のパーツなので、しばらくは何かあった場合に対処できる余裕は残しておきたい。

◆パターン確定

テストとして、TOL-50aURsCEsを5個にNSPW310BSを1個だけ使ったものをユニバーサル基板(蛇の目基板とも言う)に作成。
一番小規模な回路だが、基本的にこの回路を連ねただけの構成となるので簡単に動作を確認してからパターン作成に入る。
大きめのユニバーサル基板で本物の部品を使ってパターン作成と模擬試験もしたほうがベターだが、手間がかかるので今回は省いた。
紙に図面を起こすやり方でも良いが、私の場合はPCでレイヤー機能を有した画像ソフトを使って部品を置いてからパターン引きを行った。
この程度の簡単な回路であれば手作業でも十分に行えるが、回路図からパターン作成まで行ってくれるソフトが存在するので状況に応じて使い分けると良い。
パターン引きの時点で回路的なミス(LEDテールランプの場合は基本的な配線が主なチェックとなる)を確実に潰しておく。

◆フィルム作成

プリント基板の作成にはサンハヤト製感光基板を使用する。
感光基板は紫外線を浴びた箇所だけ保護剤が消える仕組みとなるので、銅のパターンを残したい箇所だけ専用のペンやインスタントレタリング等で隠す作りとなる。
今回は専用のフィルムにインスタントレタリングでパーツ用の穴を確定し、テープで配線用のラインを引く。
フィルムの作成が終わった時点でPC画面で確定したパターンと相違がないか目視確認を行い、問題がなければ感光を行う。

◆感光

夜の灯りを消した部屋など紫外線が極力無い条件で感光基板を袋から取り出し、作成したフィルムを感光基板の感光剤がある面に載せる。
このときにフィルムの表裏を間違えないようにすること。(インスタントレタリングが無い面を感光基板側にすると失敗が少ないと思う)
紫外線灯を使用した専用の感光ボックスがあれば良いが、普通はそんなの持っていないので家庭用の蛍光灯で感光を行う。
(時間など細かいことは感光基板の取説に書いてある)
感光が終了したら灯りを消した部屋のまま専用の現像液で現像を行う。
現像終了後は水洗いを行うが、明るい場所で問題ない。
尚、暗所での作業は赤い光であれば基板は感光しない。
私はミニマグライトにオプションのヘッドカバー+赤フィルタの組み合わせで作業灯とした。

◆エッチング

感光作業を終えた基板に対して、パターンの補修が必要かどうか目視確認を行う。
パターンが切れていたりした場合はレジストペンで補修を行い、この段階で基板を最小サイズまでカットする。
カット終了後、専用のエッチング液でエッチングを行い不要な銅を基板から除去する。
エッチング終了後は台所用スチールたわし等で保護剤を除去し、フラックスを塗って乾くまで放置。
最後に基板に部品取り付け用の穴を開けて完成。

完成した基板(パターン面)

完成した基板(パーツ面) 完成したプリント基板

◆部品付け

想定パターン通りに部品を装着して、小1時間程度で部品付け完了。
ライセンスランプ用の白色LEDはL字に曲げているため、念のためにホットボンドで固定を行った。

部品取り付け後(パーツ面)  部品取り付け後(パターン面)
部品取り付けが終了した基板

部品取り付け後(中央拡大)
中央に見える黒い部品が簡略化の貢献者であるダイオード

◆確認

部品装着後に目視でLEDの極性や制限抵抗の数値などの確認を行い、実験用電源に接続して徐々に電圧を上げていき点灯確認を行った。

gpz900r-led17.jpg gpz900r-led18.jpg
後尾灯状態
制動灯状態

(デジカメのCCDがLEDと光の波長が合わないのか黄色に見えるが、実際には正常な赤色となっている)

◆ライセンスランプ用の窓加工

基板をテールランプユニットに組み込み、テールユニットへ唯一の改造であるライセンスランプ用の穴あけを行う。
方法は荒っぽく、白色LEDを光らせた状態でテールレンズにハンダコテでマーキングし、レンズを取り外した状態でドリル等で穴を開けてリーマーでグリグリと広げるだけ。
防水加工は荷造り用の透明なテープを裏表に貼って終了。
(半年程度の感覚で外側のテープを貼り直す必要があるかもしれない)

テールユニットに組み込んでテスト中 穴開け加工後のテールユニットを逆さまにして点灯


■比較■

完成したテールユニットを車体へ取り付け、今まで使用していたv.2.0タイプのテールユニットと比較を行った。
v.2.0で気になっていた後尾灯状態の時の物寂しさは無く、多少のバラツキ間はあるもののテール全体で発光しているように見える。
また、赤LEDを全てをTOL-50aURsCEsで統一したことにより明るさがアップし、視認性は上がった。
(旧バージョンで明るすぎた問題も考慮し、LEDの数そのものは少なく、電圧・電流もやや低めに設定してある)

上がv.2.0タイプで下が今回制作したv.3.0タイプ

【後尾灯状態】 【制動灯状態】
後尾灯の点灯テスト中 制動灯の点灯テスト中

今回の方式でメリットとなったのは、後尾灯状態の時の斜め角度からの認識が良くなったことが挙げられる。
また、同じLEDで明るさを増減するために見た目にも自然に見え、本来の目的を達成したことから今回のバージョンでLEDテールランプの制作を終了する予定だ。

v.2.0とv.3.0を斜めから 斜め角度からの後尾灯点灯状態

斜め後方から 斜め後方からを上から見下ろして


■回路図

メールなどで「回路図は載せないのか?」とごく少数の方から意見頂いてますので掲載します。
正直、掲載するほど大層な回路ではないのですが、基本回路とともに載せるので有用と思われる方は個人責任の元で活用してください。(くどいようですが、私は責任持てませんのであしからず)

□基本回路□

今回はダイオードを2個使用して減光式にしたが、基本的な回路は以下の通りとなる。

この場合LEDは5個となっているが、「LED全体の制限抵抗」の値を調整することで1個にも3個にもすることが出来る。
制限抵抗の値を求める式は検索エンジン等で探して欲しい。(すぐに見つかる)
今回製作したLEDテールランプは上記の基本回路を複数組み合わせただけの構成だ。

2つある抵抗の値については最初に「LED全体の制限抵抗」の値を決めるが、この値がブレーキランプ動作時の「明るい状態」となる。
「道路運送車両の保安基準」などによれば、「制動灯(ブレーキランプ)は昼間に100m離れた場所で認識できるもの。光源は15Wから60Wの間」とあり、まずはこの条件をクリアしなければならない。(LEDは意外に強烈な明るさとして認識され、あまりに明るいと後方車両への走行妨害とも判断されかねないので電球の明るさを目安に調整するのが無難)
次にブレーキランプが点灯していない後尾灯点灯時のための2番目の追加抵抗「テールランプ用に明るさを落とすための追加抵抗」については「制動灯(ブレーキランプ)が5倍の明るさになる構造」とあるが、個人で校正された照度計持つ人はほぼ居ないと思われるので、自作する際にはノーマルの電球の明るさを目安に抵抗を付け替えて調整する必要がある。(※厳密には発光する最低面積も指定されているので自作される方は「道路運送車両の保安基準」などに目を通すのが良い)
また、逆流防止のためのダイオードで電圧が若干低下するのと、使用するLEDの送電流量がダイオードの許容電流量を超えないように気を付けて欲しい。
このダイオードが壊れた場合、バイク側のヒューズが飛ぶ恐れや、最悪のケースでは基板上のパーツが発熱して燃えてしまう懸念がある。

□Version3.0の回路図□

今回、製作したLEDテールランプ version3.0の回路図は以下の通りとなる。
本来なら2個で済む逆流防止のための整流ダイオードは4個使用している。
これは万が一のために回路を2分割化している為である。
似たような理由で制限抵抗も8個使用している。
きちんと電流を管理して計算を行えばダイオードと抵抗の部品数は半分以下になるはずだ。

部品の配置は極力、実基板と同じようにした。
基本回路で組んだ試験基板などで望んだ動きが出来ていれば問題ないと思われるが、所詮は素人の考えた回路であることをご承知おき願いたい。
パーツリストは以下の通りとなる。

LED
 D1〜D40 TOL-50aURsCEs (TAIWAN OASIS /5mm径/2.25v/20mA/1.2mCD) 40個 @55
 D41〜D44 NSPW310BS (日亜化学工業/3mm径/1.27cd/3.6V/広指向角)  4個 @260
◆ダイオード
 D45〜D48 10E1 4個 @15
◆抵抗
 R1〜R8 20Ω (1/6W) 8個 @25
 R9〜R10 470Ω (1/6W) 2個 @25
 R11 100Ω (1/6W) 1個 @25
◆基板 感光基板 32k (サンハヤト ガラスエポキシ片面 / 100x200) 1枚 @1280
現像液 (DP-10) 1個 @110
エッチング液 (H-200A) 1本 @480
フラックス 少量
◆その他 電球ソケットの残骸 1個
ホットボンド 少量
透明な荷造りテープ 少量 
GPZ900Rテールユニット  (ネットオークションで\500 1個
【計 \4,905.-(税別)】