TOKYO HY-POWER HT-750
7/21/50MHz SSB/CW Tri-Bander
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ミズホ通信関連の情報を収集をしていると必ず耳にするのが西無線だったが、それと同じように東京ハイパワーから出ているHT-750も耳にする。モノバンドVXO方式のピコトラシリーズに対して3バンドPLL方式のHT-750、同じV/HFハンディでも性格も趣向も全く違う機種だ。
対応周波数は7MHz/21MHz/50MHzの3バンド、電波形式はUSB/LSB/CWの3モードが対応しCWではセミブレークイン機能とサイドトーン機能を内蔵。局発にPLLを採用してステップは1KHz/100Hz/20Hzの3種類から選択、表示は4bitマイコンによりデジタル直読が可能、更に受信アンプ・充電回路・RIT・ノイズブランカ内蔵…と至れり尽くせりの内容となっている。
出力は7/21MHzが3W、50MHzが2Wとなっているが、これは外部電源などから13.8Vを供給した時の出力のようで、乾電池などを内蔵した時は電圧によって出力が変化する。入手したHT-750では外部電源に接続してCW波をダミーロード計測した場合、7/21MHz:2.8W/50MHz:1.8Wだったが、1.2Vニッカド電池(1000mA/h)を8本内蔵させて9.6V駆動で計測したところ7/21MHz:2W/50MHz:1Wと出力が変化している。(乾電池では12V駆動になるので出力はHF2.5W/VHF1.5W程度になると思われる)
発売は1992年と聞いているが2006年現在、東京ハイパワーのホームページでは「生産停止中」となっている。想像の域だが内部にSN16913を使用しているのでピコトラと同じく部品の入手難などが原因ではないかと思われる。
YAESU FT-817/ICOM IC-703など小型で電池駆動可能、そしてHF帯でSSB/CWが可能な機種が存在するが、HT-750と比較するとバッテリーの持ちやパッキングした時の占有質量などで劣る部分がある。特に外部バッテリーを要求するに等しいFT-817の消費電力は担ぎ上げでは致命的。IC-703もマルチバンド機種の宿命かバッテリーの持ちに関してFT-817程ではないが良好とは言いがたいと聞く。そういう意味で考えるとHT-750という機能限定型のV/HFハンディは市場価値が残っているのかもしれない。
HT-750の送受信範囲は50MHzではバンドをフルカバーせず、50.0000 - 50.4999MHzと必要な範囲のみとなる。7MHzでは送信が7.0000 - 7.0999MHzと2006年現在の日本で運用可能な周波数帯となっているが、受信に関しては7.0000 - 7.2999MHzと日本のバンドプランを大きく外れて可能となっている。21MHzは送受共に21.0000 - 21.4999MHzとなる。
個人的には設備とモチベーションの関係で7MHz帯で電波を出すことが無いだろうから問題にはならないのだが、7MHzの送信範囲がソフト的にロックされているだけならば将来拡張されるであろう100KHz分の拡張にも対応できないだろうか?と甘いことを考えてしまった。実際にはマイコン側のソフト書き換えがフラッシュ式となっている必要があるのだが、取説などからは一切窺う事が出来ない。
周波数ステップは3種類選べるが、最小値として20Hzが装備されているのでSSBモード時の音質調整も細かく行うことが出来るのはありがたい。大昔のポータブル機種であるFT-690(YAESU)などでは最小が100Hzステップだったので帯域が狭い局の音声を再現するには少々厳しいものを感じていた。画面表示上は100Hzまでしか表現できないが音質的には20Hzで変化するので実運用時に威力を発揮するものと思われる。
また、搭載しているPLLの都合だと思われるが電源を投入した直後は必ず7.0000MHz/LSBから始まる点も気になった。基本的に50MHzをメインで使用するので電源を投入するたびに50MHzへバンドを切り替え、50.200MHzなど希望の周波数へチューニングする必要がある(50MHz帯も電源を完全に切ってしまうと50.0000MHzが最初の周波数になる)。バックアップ機能などを持っていて、前回まで使用されていた周波数帯・モードが記憶されていると便利だったと思う。
更に4級の私には直接関係無いが、CW運用時のサイドトーンに関しても音量調整がフロントカバーを開けて半固定抵抗をまわす…というもので操作性が悪いというよりダメ仕様だと思う。マイコン装備しているのだからファンクションメニューからサイドトーンの音量調整を出来るようにして欲しかったが、マイコン搭載とは言え4bit、インターフェイスも考えると無理があったのだろう。そのサイドトーンの音質も気持ちよい音とは言いがたいブザー音、これも気になったが大きさを考えれば十分なのかもしれない。
他にCW関連の機能としては、CWモード時にPTTスイッチを押すとCW波が送信されてセミブレークイン機能も働く「簡易CWキー」がある。PTTスイッチはマイクロスイッチを採用して浅いながらもクリック感があるので移動先でキーパッドなどを忘れたときは。(実際に運用したいと思わないが)必要最低限の通信が可能と思われる。
バンド・モードの切り替えにはPTTボタンの上にあるファンクションボタンでモードを変える。
ファンクションボタンを1回押すとバンド切り替えモードとなり、チューニングダイヤルを回転させて望みのバンドに合わせる。次にファンクションを押すと送受信モード切替となり、やはりチューニングダイヤルで希望するモード(LSB/USB/CWから選択)に合わせる。更にファンクションを押すとBEEP音のON/OFFを選択するモードになり、これもチューニングダイヤルで選択するが、サイドトーン音も連動してON/OFFするようになる。途中でファンクションメニューを終了させたい場合はファンクションボタンを2回連続で押すと通常モードに戻る。
なんとなくKENWOOD TH-25/45系のシンプルな操作に似た内容なので個人的には非常に良く出来たインターフェイスだと思うが、唯一気になった点は外部マイクを使用せずに本体だけでの運用中にPTTボタンと勘違いしてファンクションボタンを押してしまいそうな点だ。しかし、実際は外部マイクを使用しての運用が多いと思われるので杞憂だろう。
大きさ的にはミズホ通信のピコトラより一回り大きく感じる。HT-750を手にとってみるとズッシリと重たく感じ、重量で100gちょっと上のFT-817のほうが軽く感じてしまう。画像はMX-6Sと並べたものだが、コンパクトとは言え圧倒的な「長さ」で重たく感じるのかもしれない。トップパネルや高さなどはMX-6Sとそんなに変わりないように見えるが、微妙に太い外回りサイズとなっているために大人の手で持っても「やや大きい」と感じる。但し、ピコトラは1台で約600gあり、7/21/50MHzの3バンド分を持ち歩くと1.8kgになってしまうのでHT-750は十分に軽いと言えるだろう。また、FT-817も2W程度の出力を維持しようとすると外部に鉛バッテリーなどを用意する必要があるので、この場合もHT-750のほうが軽いといえる。(FT-817で7/21/50Mhzのみを運用すると仮定した場合の比較、144/430MHzや14/28MHzも運用可能なFT-817は別の意味で価値がある。
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HT-750とピコ6Sをフロントパネル側から比較。
高さでは圧倒的にHT-750が上に出て存在感を主張する。
マルチバンド機ゆえの大きさか、片手で持つには少々余るボディサイズだ。 |
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HT-750とピコ6Sをトップパネル側から比較。
ピコ6SよりHT-750が一回り大きい外周なのがわかる。 |
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受信性能だが、HT-750とMX-6S/FT-817/TH-F7で同じアンテナをつなぎ変えて自分の耳で聞き分けて見た。使用したアンテナが受信用にとベランダへ設置したSRH999なので参考にはならないかもしれないが、受信プリアンプをONにした状態でMX-6Sなどと同じ受信感度だと感じた。受信プリアンプをOFFにした場合、ノイズは消えて綺麗な音に思えるが一昔前のFT-690程度の受信感度だと思われる(実際に手持ちのFT-690で同じ局を受信したが似たような感じだった)。音質はアナログパーツで構成されるMX-6Sを比較した場合、雑味の強いザラザラした音に聞こえてしまいよい音とは言えない。特に受信アンプをONにするとデジタルノイズも増幅されるのかホワイトノイズを強く感じ、入感が弱い局の声はノイズと混じって聞き取りにくい感じになる。この点はFT-817も似たような感じになるが、スピーカーがHT-750よりも大きいせいかFT-817のほうが少しだけ聞き取りやすかった。
比較している本人(つまり私)がミズホのピコトラ大好き人間なので贔屓目に判断していると思うが、この大きさで3バンドということを考えればHT-750の受信性能は必要にして十分だと思う。しかも今回はハンディ用アンテナで50MHzの交信しか受信していないので、ダイポールなど高効率アンテナへ接続した状況では受信アンプが邪魔になる場合もあると思う。
その他の機能としては液晶パネルおよびS/RFメーター用の照明が装備されている。しかし、単なるムギ球なので液晶もS/RFメーターも十分な明るさで照らしているとは言えず、改善の余地があると思われる。考えられる理由としては液晶とメーターの距離が微妙に長く、ムギ球レベルの電球では人間の目で何かを認識する明るさに達していない。試しに電球を液晶パネル側に近づけて見たら周波数表示などは十分に認識できる明るさになったので電球を2個装備して欲しかった。(消費電力を考えると得策ではないのだろうが)
アマチュア無線のブームが去った現在ではJARL主催の大きなコンテスト以外の夜間運用は滅多に聞かないし、コンテストなどで徹夜運用する場合には照明装備も揃っていると思われるので重大な欠点にはならないのだろう。むしろLEDが進化している現在なら白色LEDなり電球色LEDなりを2個装備させてあげれば劇的に改善されるので、ユーザー側で手を入れてしまうのが望ましいと思われる。
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トップパネル部分
アンテナ端子、RIT、ノイズブランカスイッチ、ダイヤルロックスイッチ、ステップ切り替えスイッチ、S/RFメーター、ボリューム兼電源スイッチ、チューニングダイヤルが配置されている。
チューニングダイヤルはエンコーダーを使用しているのでバリコンを使用したピコトラのように回転位置の限界はない。
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ボトムパネル部分
電源切り替えスイッチ、RFアンプスイッチ、ランプスイッチが配置され、電池ボックスの蓋をロックするネジもボトムパネルに配置されている。
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フロントパネル部分
スピーカー、マイク、液晶ディスプレイが配置され、デザイン的にもすっきりとしている。
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リアパネル部分
電池ボックスの蓋が大部分を占めるが、スイッチ関係は何もなく非常にシンプルなリアパネルとなる。
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サイドパネル(左)部分
上からファンクションボタン、PTTボタン、外部KEYジャック、外部電源ジャック(入力13.8V)が配置される。
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サイドパネル(右)部分
右側の再度パネルは外部マイク・スピーカー端子のみが配置される。
マイク端子は2.5φ、スピーカー端子は3.5φ。
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電池ボックス部分
構造的にはミズホ通信のピコトランシーバーに似たプリント基板のパターンにスプリングがハンダ付けされたものとなる。
単三電池を8本搭載し、シールには「ニッカド(700mAh)8本使用の事」と印刷され、1.2VのNi-cd電池を8本使う指定となっている。
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オプションのロッドアンテナ
HT-750には幾つかのオプションがあり、リニアアンプ・専用ケース・外部スピーカーマイク、そして画像のロッドアンテナとなる。
周波数は7MHz/21MHz/50MHzとHT-750の運用可能周波数に対応しているが、ベースコイルを交換することで対応する。
ただ、全長1m20cm程度のアンテナなので7MHzと21MHzに関しては受信専用もしくは近距離通信専用にしか使えないと思われる。
50MHzでも使えないことは無いだろうが、利得は期待出来ない。
マルドルか第一電波あたりのOEMと思われるが詳細は不明。
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■定格 |
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<一般使用> |
●周波数範囲 |
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受信 |
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7MHz帯
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7.0
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〜
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7.2999MHz
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21MHz帯
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21.0
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〜
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21.4999MHz
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50MHz帯
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50.0
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〜
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50.4999MHz
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送信 |
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7MHz帯
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7.0
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〜
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7.0999MHz
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21MHz帯
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21.0
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〜
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21.4999MHz
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SSC |
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50MHz帯
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50.0
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〜
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50.4999MHz
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●電波形式 |
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A3J (USB, LSB), A1 (CW) |
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●アンテナインピーダンス |
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50Ω 不平衡(BNCコネクタ) |
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●電源電圧 |
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DC13.8V(定格) 8.5V〜15V |
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●接地方式 |
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マイナス接地 |
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●消費電流 |
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●外形寸法 |
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幅66 × 高さ188 × 奥行48mm(突起物含まず) |
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●重量 |
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850g(単3型電池8本含む) |
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●付属品 |
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取扱説明書
外部電源コード
3.5φキープラグ |
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<送信部> |
●送信出力 |
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●変調方式 |
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平衡変調 |
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●スプリアス発射強度 |
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-40db以下 |
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7、21MHz
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-60db以下 |
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50MHz
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●搬送波抑圧比 |
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60db以上 |
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●不要側波帯抑圧比 |
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40db以上 |
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●マイクロホンインピーダンス |
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600Ω |
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<受信部> |
●受信方式 |
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スーパーヘテロダイン方式 |
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●中間周波数 |
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9.000MHz |
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●受信感度 |
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SSB・CW 0.3μV以下 @10db S/N
(PRE AMP スイッチON時) |
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●選択度 |
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SSB・CW |
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2.2KHz/
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-6dB
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6.0KHz/
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-60dB
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●低周波出力インピーダンス |
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8Ω |
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●低周波出力 |
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800mW (8Ω 10%歪時) |
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●RIT可変周波数 |
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±0.5KHz |
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